現代だからこそなお活きる「めぞん一刻」の魅力

一刻館という古くてぼろぼろの木造アパートに住んでいる個性的な住人たちの織り成す人間ドラマを描いています。
若さと純情さがとりえだがどこか暗くて何よりビンボーな主人公の五代さん。
お金持ちの御曹司で白い歯がきれいなテニスのコーチをしているアラサーの三鷹さん。
この二人がアパートの若くてきれいな管理人の響子さんを恋敵として奪い合うところが物語の軸になっています。
他にもどこでどんな仕事をして暮らしてるのかまったく分からない謎のおっさんの四谷さん。大酒飲みでいつもがははと笑って酔っ払っている主婦の一の瀬さん。
スナックで勤務していてスケスケの裸同然の格好で歩いている朱美さんが一緒に暮らしています。
古典的な漫画なので、貧困に打ち勝とうとひたむきに頑張っている五代さんは少数派として描かれています。
しかし現代ではご存知のように彼と同様の立場にいる非正規雇用の男性が非常に増えているわけです。
そう考えると、この作品で描かれている五代さんと三鷹さんの恋愛バトルは、当時想定されていたよりも多くの人たちの胸を打つものとなるのではないでしょうか。
響子さんの選択は一見すると非合理的かもしれません。
しかし作者の高橋留美子さんの代表作ともいえる今作品がこれほど長期にわたり名作として語り継がれるのは、まさにその「非合理的な選択が成されるに至るまで」を、物語全体で実感を伴って寄り添いながら追体験する構造になっているからだと思います。
描かれた昭和の時代らしさを反映する街の情景や生活感にも大いに見所があります。
ギャグ漫画としての笑いあり、ストーリー漫画としての涙もありの、非常に骨太な作品で、いつまでも読み継がれて欲しいと思えるすばらしい作品でした。